「教師という生き方」(鹿島真弓)

教師にとっての「やりがい」「達成感」「充実感」

「教師という生き方」(鹿島真弓)
 イースト新書Q

ついにこういう本が
出版される時代になりました!
感慨深いものがあります。
仕事の大変さを
教職員が語った本など、
これまでなかったからです。
仕事の辛さを同僚や家族以外に
吐露すること自体、
憚られた雰囲気がありました。

「安定している」「公務員」
「聖職者」「子どものため」…。
そうした見られ方のために、
青天井のように増える仕事を
一生懸命こなしてきました。
私が30代の頃は、
1ヵ月の残業時間が200時間を
越えることもありました。

それがようやく
「働き方改革」の浸透により、
ブラック公務員といわれる
教員の仕事に、
世間の目が
向けられるようになったのは
喜ばしい限りです。

さて本書ですが、
やはり教師という仕事の
ブラックさが
ふんだんに紹介されています。
筆者は女性である分、
なおさらです。
育児休暇が取れない、
代用教員を
自分で探さなければならない。
とんでもない話が
盛りだくさんです。

しかし世間に広く紹介すべきは
そこではないと思っています。
筆者はその
ブラックで超多忙な環境の中で、
しっかりと
「やりがい」「達成感」「充実感」を
感じているのです。
崩れかけた学年集団を
学年部職員全員で立て直した経験、
教育研究に専念し、
教育的エンカウンターの
実践研究を積み重ねたこと、
発達障害を抱えた
子どもたちと向き合い、
その対処法を見いだしたこと等々、
同じ教員である私からすれば、
羨ましいの一言に尽きます。

多くの教師が過重労働の中で
倒れずにやっているのは、
この「やりがい」「達成感」「充実感」が
あるからなのです。
自分が全身全霊を賭けて
子どもたちと向き合い、
それに子どもたちが
しっかりと応え、
子どもたちの成長する瞬間に
リアルタイムで立ち会うことができる。
これこそが私たち教師にとっての
「やりがい」「達成感」「充実感」なのです。

私たち教員が、自分の経験を
発信する機会になかなか恵まれず、
その一方で教師という仕事の
大変さばかりがクローズアップされる。
それによって
私たちの勤務の異常さの
改善に繋がっているのは
喜ばしい限りですが、
それだけでは
若い学生が引いてしまい、
教師のなり手が減少する
懸念があります。

ブラックな部分を解消する動きと、
教師という仕事の魅力を
紹介することの二つを、
同時進行で進めなければ、
日本の教育が崩壊しかねません。
本書こそ、
中学生・高校生・大学生、
そして大人のあなたに、
幅広く読まれるべき一冊です。

(2018.12.26)

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